何で北海道なんだろう。気が変わって行く気を失くした場所へ。
私の知らない誰かもっと他の友達と、知られないように出掛けるならともかく。目的地が違うならともかく。
同じ仕事をしてる相手と。これ見よがしに。
ショックだった。
それを聞いた時、嫌がらせの様に思えた。
どこか陰湿なものを感じた。
* * * * * *
仕事を始めて間もない頃、丹羽と近所のスーパーでバッタリ出会った事がある。
丹羽は車で食料品の買い出しに来ていた。
それでお茶するため、2階の店に入る。
以前、そこでバイトしていたそうだ。
丹羽は仕事にそれほど夢がなさそうだった。
結婚したがっていた。
恋愛話をしていたと思うが「中絶した事ある。」と話し出す。
つわりと気付かず胃の病気だと思って、病院で検査をしたらしいのだ。「胃カメラを飲んでん。」と言う。
生理不順だったのか、普通なら勘付く。
妊娠とは思いたくなかったのかもしれない。
内科を受診するのも大変だ。
とにかく相手には相談せず、中絶したようだ。
車の中で避妊具も付けないで行為に及んだそうだ。
「アッ!」と相手の男が声を出し、うっかり出してしまった瞬間が分かったようだけど。
ずい分荒っぽいやり方だ。
コンドームを用意しない相手。マナーが悪い。
しばらくして水子供養に東京まで行ったと話す。
そのお守りを見せてもらった。
家事手伝いは暇を持て余す。
電子オルガンの先生になってからもそれは大して変わらない。
午前中は空いてるし。
丹羽は私より仕事日数は少なく、一日の生徒の数も少なかった。
(丹羽はバイクで通っていた。)
午前中は空いていて暇を持て余す。
いろんな事に意欲がない様子だった。
若さが無かった。
冷めた大人に見えた。
自分が習うレッスンにも身が入らないようだった。
よく休んでいて、やる気がなさそうだった。
友達としてはこれまで周囲にはいないタイプだった。
でっぷり太った体型からか、タバコを吸う時の表情のせいか。
ふんぞり返ってる。太々しい、そんな風に見えた。
後々その印象が間違いでないと、分かる日が来る…。
(奔放に遊んでた女の子なんて信用できない。普段の外面は常識的だけど、中身は気まぐれ。その時の気分で偉そうな物言いをする。すぐに気が変わって当てにならない。
でも、この時はお互い知り合ったばかりの尊重する間柄。
それなりに距離があって支障は無かった。)
講師コンサートの後、16人程度いた先生たちは二つのグループに決裂する。
派閥だ。
気が合う物同士のグループに分かれる形になる。
私はもちろん丹羽や井上と別のグループを選んだ。
井上からは何の返信もなく、丹羽とも距離を置いて翌年になった。
お互い共通の先生の元でレッスンは続けていた。
私はその先生から電話で、丹羽が北垣と北海道へ旅行に行ってると知らされる。
ショックだった。
それを聞いた時、嫌がらせの様に思えた。
どこか陰湿なものを感じた。
何で北海道なんだろう。気が変わって行く気を失くした場所へ。
私の知らない誰かもっと他の友達と、知られないように出掛けるならともかく。目的地が違うならともかく。
同じ仕事をしてる相手と。これ見よがしに。
レンタカー旅行が実現しなかったのは、100%井上のせい。
丹羽は自分は全く関係ないし、責任無いと思っている。
自分は全く悪くないと思っている。
運転を補助する目的で免許を取得するよう条件を出したのは丹羽だ。
「申し込んだ!?」は必ず行くという前提の強い口調だった。
教習所の費用や車の修理代、私は自分の預貯金で用立て、しかも生かせないまま、損害として残ったままになってる。
不完全燃焼でやり場のない感情だけ抱えて過ごしてきた。
丹羽は生活必需品含む、ほとんどの生活費は親がかりの人だ。
だから何も感じてない。
損をさせた、無駄にさせたって感覚はないんだ。
自分だけ望んでいた形で旅行して平気でいられる。
丹羽たちが旅行から帰って、講師会議で顔を合わせる。会議が終わると丹羽の所属グループの皆が『お土産、お土産!!』と賑やかに騒ぎ出した。
丹羽はもちろん自分のグループにだけ買って用意していた。それは当然だし、付き合いの無い片方に渡す必要は無い。
すると丹羽は私に「トイレに隠れて。」と言い、出るように促す。
会議の部屋のすぐ近くのトイレでお土産を渡された。
(自分のグループの仲間には用意しているのに、もう一方には何も無く、その中の私だけに何かを渡すのを、見られたら困るという意味でだろう。)
キタキツネのイラストの可愛い折り畳み財布だった。
悪くはないけど、小学生の女の子が持つ様な、あまりにも幼い感じの財布だった。
チープ…それがピッタリか。
土産物を渡す場所といい、渡し方といい。
やってることのひとつひとつが…。
ここまでお粗末で無神経とは。
よくこんな扱い方をする。
井上は幼稚で卑怯。
丹羽は鈍感で無神経。
知り合ったのが不運だった。
約束を守らない友達~井上理恵と丹羽登紀子
約束を守らない友達~不実と気まぐれ
無責任女が夢を砕く~生育環境の落差
見下すのは平和な家の子
親切心という名の横暴~傷と損失
甘え慣れた女と我慢してきた女
迷惑なおねだり女~欲しがる癖は罪
気心の知れない友達~通じない言葉
惨めで苦しい夏~要らなかった運転免許
丹羽は元々免許を持っていたが、その費用は全て親持ちだ。
電子オルガンのレッスン料も、高額な楽器から楽譜代まで全てが親がかりでそれが当たり前で過ごしてきた。
だから何も感じてない。
私の仮免の時期に気が変わって無駄にさせ。
その次は自分だけ望んでいたスタイルで旅行する。
組み合わせ、最悪だね。