私は井上がどんな性格なのか見極める事ができなかった。
「おねだり」に便乗し、「軽口」に同調し流されてしまう。
(その場の空気に合わせたい気持ちが強く。)
その結果、身の丈に合わない自動車運転免許の取得に奔走する。
仮免の時期、丹羽は不穏な態度を見せ始める。
気が変わったのだ。
井上は会えば必ず『夏の旅行だけが楽しみ。』『楽しみにしてる。』『旅行へ行く、早く行きたい。』と乗り気で話し、行く気満々だったので信じたし安心してた。
間際になってくると『費用が足りなかったらバイトする。』と言い出すが、それも信じた。
井上の言葉を常に信じた。
6月、井上が全く準備してなかった現実と直面する。
丹羽は取り付く島の無い態度でいる。
言葉が通じない。
そう感じた。
何一つ届かない。
悔しさも怒りも、理解してない、通じない。
あれも噓これも噓~言葉が通じない友達より
(井上理恵は)
金銭の節約、倹約など考えた事も無い。
お金の心配をしたことが無い。
不安を感じたことなど一度も無いはず。
欲しい何かを我慢して貯金した事がない。
預貯金できない性格だと知らない。自分を知らない。
ねだって生きる。
それが井上の人生観、価値観だから。
それで1年先の計画を立てる。
約束の重さも知らない。
言葉の重さも知らない。
実行しなかった時、相手がどれだけ傷つくかも知らない。
井上の「おねだり」が私と丹羽の接点。
プライベートでは共通の話題がほとんど見い出せなかった。
趣味も価値観も違い過ぎた。
「どっかへ遊びに。」「旅行に行きたい。」
そんな井上の『欲しい』が私と丹羽の接点。
井上のおねだりが無ければ距離があった。
いい距離を保ったまま、付かず離れずで傷つかずに済んだ。
自分を知らない女の子は罪だ。
罪深いと思う。
迷惑なおねだり女~欲しがる癖は罪より
なぜあんなにすぐねだる事ができるのか不思議だった。
遊びに「連れてって、連れてって。」
車に「乗せて乗せて。」
甘えるのに慣れてる女の子だ。
自分を甘えさせてくれる相手をすぐ見分ける。
嗅覚というやつだろうか…。
物怖じせず気軽にねだる井上に、私は内心驚いた。
私は、幼少時から物をねだっても買い与えられなかったり、望みを叶えられなかったので、あきらめる癖が付いてる。
欲しいものを我慢して成長した。
希望を口にしないで大きくなった。
決して願望が無い訳じゃない。
いつもおねだりして願いを聞いてもらえた女の子との落差。
私は自分からは言い出せない。
言い出さないが、井上のおねだりに便乗する形でレジャーに加わってた。
おねだり攻撃する井上と、それを聞いてお世話する丹羽。
ただ付いて行くだけの私…。
二人ともこれまで周囲にいないタイプの友達だった。
そして仲良くやって行きたいと言う気持ちが強く働いた。
なので無理しても合わせて行こうとした。
甘え慣れた子と無理して合わせる子より
約束を守らない友達~井上理恵と丹羽登紀子
約束を守らない友達~不実と気まぐれ
無責任女が夢を砕く~生育環境の落差
見下すのは平和な家の子
親切心という名の横暴~傷と損失
嫌がらせとチープなお土産~消えない傷
惨めで苦しい夏~要らなかった運転免許