知り合って5か月で1年後の約束をしたのが間違いだった。
まさか貯金ができない人だなんて夢にも思わない。
夏の発表会が終わり「旅行に行きたい。」と言い出したのは井上理恵だった。
能登半島へ井上と丹羽登紀子と3人で2泊3日の旅をした。
夏の急な旅。
その後、ゆっくり計画を立て、もっと大きな旅行をしたいという気持ちになった。
一年後の夏にそうしようという話で盛り上がった。
私は海がいいと思ったが、丹羽は泳ぐのは嫌で、行き先の希望は北海道だった。
私と井上は北海道へ旅した事はあった。
井上は学生時代に船便で行ってユースホステルに泊まる質素な旅だったらしい。
私はツアー参加でバスで巡るのを経験していた。
バスは大変だ。
定期的に土産物屋へ入って全てが分刻み。
後のほとんどは、バスの中の座り姿勢で長時間。
かなり疲れると、私はそうこぼした。
車でなら自由にスケジュールを調整できる。
それでレンタカーを借り、自分たちだけで動き回る旅がいいよという流れになり…。
当時、丹羽だけが免許を持っていた。
丹羽に、車で遊びに行こうとよくせがんでいたのは井上だった。
「車に乗せて。」「どっか連れてって、連れてって。」
臆する事無く甘える。ねだるのが上手い。
(お兄さんが友達同士でスキーへ行くのにも付いて行くらしい。)
とにかく1年後の旅行は、レンタカーでの北海道周遊と決まった。
丹羽は自分一人が運転するのは不安だし、誰かもう一人免許を持っていた方がいいと言う。
それはそうだ。
ひとりでドライバーの役目は疲れる。
井上と私は、免許どうするって話になったんだけど…。
収入的に井上は無理なようだった。
じゃあ残っているのは貯金のある私だ。
もちろん無理矢理ではなく、夢のある計画に気持ちは膨らんだ。
だけど教習所へ出向くのはすぐにではなかった。
最初にまとまった費用を払い込む事、教習所へは電車とバスを乗り継いで通う事。
考えるとそう簡単に踏み切れない。
オルガンのレッスンも続けていたし5級取得を目標にしていた。
受験すると決めたら、そちらに時間を割くのを優先したい。
そんな時、先生から実力を蓄えて先に延ばすよう助言があった。
時間やエネルギーの余裕はできる。
秋、電車のホームで丹羽が「もう申し込んだ!?」
私の手首を持って振りながら、強い口調でそう言った。
最終的に背中を押された形だ。
そして教習所通いが始まる…。
申し込んで通い始めたら後には引けないんだよ。
予定変更するなら申し込む前にしてくれ!
そう言いたかった。
結局、北海道へなんて行ってない。
翌年、6月に井上、丹羽と3人で会った。
井上は全く資金を貯める事ができなかったのだ。
「お兄ちゃんがお金貸してくれへんねん。」
「お父ちゃんがお金貸してくれへんねん。」
「お母ちゃんがお金貸してくれへんねん。」
これが井上の言い訳だった。
これを聞かされた時、唖然とした。
あまりに違う、全然違うと心の中ががヒリヒリした。
スキー旅行を散々繰り返した後、バイトでお金を貯めると言っていたが口先だけだった。習い事をいくつも始め。
言ってる事とやってる事が全然違った。
それを考えるとたまらなかった。
だったら、教習所に申し込む前に変更してよ!!
大きな声で叫びたかった。
自分は何一つ我慢せずに目先の楽しみを最優先。
その場しのぎに実行する気もない事をペラペラしゃべって、最後は兄や親に頼る気だった。
困ったら家族にねだるつもりでいた。
自分が何とかする気なんて全然なかった。
ギリギリまで先延ばしにし…。
お金を貸さない家族が悪いかのような言い訳。
私は井上理恵の家族と約束した訳じゃない。
何かと言えば「お兄ちゃんが、お母ちゃんが、お父ちゃんが。」
こんな幼稚な性格とは知らなかった。
丹羽は2月にすでに行く気を失くしていた。
私が仮免許中の事だ。
「え~?行くの~!?」と悪びれる様子もなく平気で言う。
2対1で味方がいない。
取り付く島が無い。
二人に私の気持ちは分からない。
生い立ち№12
肩身の狭いドライブ~善良な人の残酷
約束を守らない友達~井上理恵と丹羽登紀子
無責任女が夢を砕く~生育環境の落差
見下すのは平和な家の子
親切心という名の横暴~傷と損失
甘え慣れた子と無理して合わせる子
迷惑なおねだり女~欲しがる癖は罪
あれも嘘これも嘘~言葉の通じない友達
嫌がらせとチープなお土産~消えない傷
惨めで苦しい夏~要らなかった運転免許
二枚舌~言葉の重さを知らない女
傲慢な子、無責任な子~共働き家庭の弊害
2023年03月19日
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください